猫の耳がカットされているのはなぜ?TNR活動の重要性とは
突然ですが、みなさんは耳がカットされている猫を見たことはありますか?
公園や住宅街など、主に室外で生活する猫たちにそのような処置がおこなわれています。
では、なぜわざわざ猫たちの耳をカットする必要があるのでしょうか?
今回は、「猫の耳がカットされているのはなぜ?」というテーマで解説します。
「耳がカットされていてかわいそう」と思う方がいるかもしれません。
しかし、この取り組みが猫たちを救って事実を、ぜひこの機会に知ってください。
知っていますか?猫の耳がカットされている理由
公園や住宅地などで耳をV字にカットされている猫を目にする機会があります。
これらの猫は「地域猫」といい、耳は人為的に一部カットされたものです。
カットされた耳のV字がさくらの花びらにみえることから、「さくら猫」とも呼ばれています。
なぜ耳がカットされているかというと、それらの猫が“避妊・去勢手術済み“であることを示すためです。
避妊・去勢手術によって、猫は生殖器系の病気の予防につながり、人間は過度な繁殖による野良猫の増加という問題をそれぞれ回避できます。
このように、猫たちを地域猫として守っていこうとする取り組みを「TNR活動」といい、日本全国で広く実施されています。
とはいうものの、猫たちを守るためであっても「避妊・去勢手術をするだけなら耳をカットしなくてもいいのでは?」と思う方がいるかもしれません。
しかしこれにもちゃんと理由があります。
以前は耳をカットしていなかったため、すでに手術が施されているのかわからず、何度も捕獲・手術した形跡の確認がおこなわれていたようです。
そのため、猫たちにかかる負担の増加、捕獲や確認に必要な労力などさまざまな理由から、耳をカットするのが定着しました。
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猫たちを守る「TNR活動」とは
環境省から発表されたデータによると、2021年4月1日~2022年3月31日までに殺処分された猫の数は、全体で1万1,718匹とされています。
※参考:犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況
このように数多くの猫が殺処分されている実態を危惧した人々(団体含む)がはじめたのが、TNR活動です。
TNRはそれぞれ、捕獲(Trap)、避妊・去勢手術(Neuter)、元の場所へ戻す(Return)の頭文字からきており、「すべての猫が飼い主となる人間と幸せに暮らせるようになること」を目的としておこなわれています。
避妊・去勢手術を施す必要性についてですが、先述したように年間1万匹以上の猫が殺処分されている現状があり、そのなかには多くの子猫も含まれています。
猫の繁殖はねずみ算式に猛烈な勢いで増えるのが特徴です。
猫のメスは1年に2~3回の出産をし、そのたびに約5匹の子猫を生みます。
また、生後半年頃から出産が可能となるため、計算上では1年後には50~70匹ほどの数になります。
この点から、誕生してもすぐに殺処分の対象となってしまう子猫も数多くいるのが実情です。
このような悲しい出来事を少しでも減らすため、TNR活動によって、事前の避妊・去勢手術が施されているのです。
猫の耳をカットすることについては、一目で手術済みであることを証明できる点で、わかりやすい目印としておこなわれるようになりました。
耳をカットするタイミングですが、避妊・去勢手術を施す際に全身麻酔をかけることから、そのとき同時にカットされるのが一般的です。
そのため、猫にかかる負担が少ない方法として有効だとされています。
カットされる耳はオスとメスで異なっており、オスは右耳、メスは左耳となっています。
ただし、統一された基準ではないため、すべての地域で同じとはいえないようです。
野良猫と地域猫は何が違うの?
野良猫と地域猫の違いとしては以下の点があげられます。
◇野良猫
- 飼い主がいない
- 避妊・去勢手術を受けていない
- 発情期のたびに個体数が増えていく
◇地域猫
- 飼い主がいない(周辺住民が協力して計画的に世話をしている)
- 避妊・去勢手術を受けている
- 個体数が増えることはない
- 耳がカットされている
どちらも主となる飼い主はいないものの、地域猫は周辺住民が一体となって、計画的にエサやりやトイレの処理をおこなっているケースがほとんどです。
また、避妊・去勢手術を受けているため、個体数が増え続ける野良猫とは異なっています。
“さくら猫”は地域に愛されているという証
耳がカットされているのは、地域の人々が猫たちを大切にしようという気持ちからはじまったTNR活動の成果です。
殺処分されてしまう猫たちが多いなか、地域猫としてたくさんの方々から愛情を受けられるのは、猫にとってもいいことなのかもしれません。
耳にさくらの花びらを持ったさくら猫を見かけた際は、邪険に扱うことなく、暖かい気持ちで見守ってあげてくださいね。